そんなことをぼんやり考えていると、「南君」と声を掛けられた。

声につられて顔を下げると、そこに美術部顧問の幸ちゃんこと、幸子先生が立っていた。



「幸ちゃん?どうしたの?」

「南君、あなた最近全然部活に来てないでしょう。

美大受験するんなら、もっとしっかり気合い入れなさい!」


ぴしゃりと叱りつけられてしまい、そういえばずっと部活をさぼっていたことを思い出した。


「あー…すみません。

明日から、ちゃんと顔出します」

「絶対よ?彼女が出来たからって、いつまでも浮かれてちゃダメだからね!!」


俺の言葉に幸ちゃんは念を押すようにそう言って返した。

幸ちゃんに言われ、神菜との"恋人ごっこ"を始めたあたりからずっと部活に顔を出してなかったことに気が付いた。


恋人であることをアピールするために、放課後になるとすぐに神菜と一緒に帰っていたし、

そのまま公園に行けば、そこでおっさんに絵の指導をされていたので、部活の存在はすっかり忘れていた……。


別に今のままでも良いような気がしなくもない。

けれど、自分は一応美術部の部長でもあるし、幸ちゃんにも部活に行くと言ってしまった以上、行くしかないだろう。