その日から、数日は平凡な日々を過した…。
朋華のストーカーの件もなにも起こらないし、学校でも神菜との恋人ごっこは平穏だった。
ただ、前々から感じていた神菜の変化が目に見えて明らかになっていた…。
一言で言えば、
可愛くなった。
それは俺の感覚だけはなく、周りの言葉もそうだった…
「なぁ、優斗」
「なんだよ」
「最近、神菜ちゃん可愛くなったよなー」
と、北野が茶化すようにわざわざ俺に言ってくるほどだ。
俺が奴の言葉にそっけなく「そうか?」とだけ答えると、北野は大げさに声を上げた。
「この鈍ちん!
彼女が可愛くなるなんて、彼氏のために決まってんだろ!なんで気付いてやんねーんだよ!!」
「はいはいはい」
北野の言葉を俺は軽く受け流した。
普通に付き合っていればそれでも納得出来るだろう…。
けど、俺と神菜は“恋人ごっこ"だ。
偽の彼氏のためにわざわざ可愛くなろうとするだろうか…?
するわけない。
…つまり、俺の為じゃなくて、他の誰かのためにそうなっているのだろう。