ガリガリと、鉛筆を握ったおっさんの手が俺の絵の上を無遠慮に動いていく…
「ちょっ、なにして…っ、」
そう声を上げかけたのだが、スケッチブックの中の絵は見る見るうちに存在感のある陰影がつけられていき、俺は思わず息を飲んだ…。
「…っま、こんなもんやな!」
そう言っておっさんは満足そうに頷いた。
「……凄い」
俺は無意識にそう呟いていた。
出来上がった絵は、俺が描いていたものより何倍もいいものになっていたからだ。
「……おっさん、何者…?」
俺がそう訊ねると、おっさんは得意げに笑って言った。
「ワシはこの公園の主や!
…そんなことより、
なぁ、兄ちゃん…指導料代りに飯奢ってくれへん?」
「………は?」
…どう見ても、
このおっさんは、公園の主と言うより、ただのホームレスだ。
こんな怪しげなおっさんに飯を奢ることもなかったのだろうけど、
このおっさんはいったい何者なのか気になったので俺は奢ることにした…。
これがおっさんへの餌付けになるなんてことは、この時の俺はもちろん知らなかった……

