「記念日のお揃いの物とか買う?」
カップルには記念に買うお揃いのアイテムが必須なのだと、神菜は提案する。
神菜に言われてそれもそうだと頷いた。
「あー…、
そうだな、神菜はなんか欲しいもんある?」
「んー…?
とくにないかも」
俺が訊くと、神菜からはそんな返事。
言い出すくらいだから何か考えていたのかと思えば、予想外なことになにもないと言われて俺は少し考えた。
「じゃあ…、無難に指輪とかでいいか?」
…そんな適当な提案により、適当な店で、適当な値段の、適当なデザインのペアリングを買うことになった。
そして、買った指輪をさっそく薬指に嵌めると、神菜は何やら難しい顔をして薬指を見つめた。
彼女はいったいなにを考えているのだろう…
そう思って俺も自分の薬指を見つめた。
もしかして、"恋人ごっこ"でもお揃いの指輪は嫌だとか思われているのか…。
いや待て。神菜がそんな普通のことを考えるわけがない。今までの経験からそれは断言出来る。
もっとこう…突拍子も無いことを考えているに違いない。
そう。例えば…
「……薬指って、なんで存在してんのかな…?」
それくらい突拍子も無いことだろうと、冗談半分でそう口にした。神菜が笑うだろうと期待して。
しかし、神菜からは予想もしない言葉が返ってきた。
「あ。私も同じこと考えてた」
大正解でした。