「……ねぇ、なんか楽しい話ない?」
神菜は暇そうな顔で俺にそう話を振った。
「楽しい話なぁ……」
言われて俺は首を傾げた。
この不思議な子が楽しいと思うような話なんて、俺にあるのだろうか…
少し考えて、あることを思い出した
「あ! 月の土地買った話したっけ…?」
「月の土地?」
俺の言葉に神菜は「なんだそれ…」と言いたげな顔をした。
「ネットでさ、座布団くらいの面積の月の土地を買ったんだよ」
「リアルに月の土地?」
「うん」
俺は空を見上げて青空にうっすらと浮かぶ白い月を指差した。
…ちなみに、なぜ俺が月の土地を買うことになったかというと、おっさんが勝手にネットで購入したからだ。
馬鹿馬鹿しい買い物のような気はするけど、空とか星とかそういった類いのものは元々好きなので、買って嫌な気はしなかった。
「俺の土地の隣りの土地は、某有名アイドルが買った…」
「え!? 誰!?」
思った通り神菜は話に食いつき、俺は彼女の耳元でそれが誰なのかを教えた。
そのアイドルの名前を聞いた神菜は嬉しそうに目を輝かせた
「ほんとにっ!?」
「ほんと。内緒な」

