覚悟を決めた俺に神菜は特に恥じらう様子もなく、俺の首元に自分の顔を近付けた…。


…そして、



そのまま、

神菜は俺の首に噛み付いた…






「――― い゙っ!!!」


あまりの衝撃に絶え切れず声を漏らすと




「ご、ごめんっ!!痛かった!? 」


と、神菜は慌てて唇(というか歯)を俺から離した…。





「痛いに決まってるだろっ!?」


俺は思わず大声を上げる。


なんでキスマークつけるのに歯を立てるんだ!?
やっぱり、さっきのこと怒っているのか!?


軽く頭の中がパニックになる俺に対し、神菜が申し訳なさそうな顔をして俯いた。



「…ごめん、

私、キスマークの付け方よくわかんなくて…」


神菜がしょんぼりした様子でそう告げた。



「だからって、歯立てたらそれは歯形だろ」


「…あ!そっか」


「………」




知らないならキスマークつけたいとか言うな…

そう思いながら、ピリピリ痛む首を擦る…。





すると、


「じゃあ、優斗がお手本見せてよ」


そう言って神菜は、自分の首筋を俺の前に惜しげもなく晒した。



「いや、ちょっ…」


「どんとこい!」


焦る俺に対し、神菜は強引に迫る。


その無自覚無防備さに俺は内心溜め息を零した。
無自覚なんだろうけど、こんなことをされては他の男だったらなにを仕出かすかわかったもんじゃないだろう。

自覚がないだけに心配に思う。






「…えーっと、

じゃあ、じっとしてて」


俺は迫る神菜の肩を掴み、彼女を固定した。

そして、晒された首元に口を付けた。


恋人ごっこ云々よりも、
これがせめてもの男よけになればいいと思った。

そんな思いで俺は彼女にキスマークをつけた。




…とは言ったものの、


彼女のその真っ白い肌を自分が汚してしまうことに躊躇い、

俺がつけたのは、なんとも控え目なキスマークとなったのだった……