俺の言葉を真に受けた神菜は、大人しく画面に目を向けた。


部屋の中に聞こえるのは、画面から流れてくる厭らしい喘ぎ声とかだけ。

俺も神菜も黙って再生が終わるのを待つ…。



なかなか気まずい雰囲気に、俺はAVを観ることにしたことを少し後悔した。


神菜がキレ出すのではないかと内心ヒヤヒヤしていたし、

男が女の子にAVを見せるのは、セクハラだかDVだかの一種だと保健の授業で言っていたような、そうでなかったような……


とにかく、いろいろなことが気になってしまい、俺の神経は必要以上にすり減らされた。



再生が終わり、疲れたように息を吐く神菜に、


「……じゃあ、こんな感じで俺らはヤッた」

と、俺はそう言い聞かせた。



その言葉に神菜は笑みを浮かべて「了解」と頷いた。




…そして、


「それじゃあさ、キスマークつけようよ!」と提案してきた。




「…は!?きっ、キスマーク!?」


「うん!カップルはみんなつけてるでしょ?」


なんて事を言い出すんだと慌てる俺に対し、神菜はのほほんとした様子でそう言う。


確かに、クラスのやつらは恋人同士で見せつけるようなキスマークをつけてはいるが…

それはほんの一部の、所謂バカップル的な奴らがすることだ。



しかし、それを知ってか知らずか、神菜はやる気まんまんな目を俺に向ける。




「だめ?」


「うっ…」


可愛らしく首を傾げながらそう聞いてくる神菜に、俺はなぜか逆らえなかった。



俺も男だ。キスマークの一つや二つで騒ぐのもみっともない。受けて立とうじゃないか…!


そう自分に言い聞かせながら覚悟を決めた。