電話を終えると、俺はつい溜め息を零した。
軽い気持ちで始めた恋人ごっこが、どんどん変な方向へ向かっているような気がしたからだ…。
「なに、溜め息なんか零しとんねん。さては振られたんか?」
背後からそんな声が聞こえた。
当然のことながら声の主はおっさんだ。
顔は見えないが、声音から、いつものようにニヤニヤ笑っていることは容易に想像がついた…
『どこから入ってきたんだよ』とか、『勝手に入ってくるなよ』とか、
そんなツッコミは、この状況が毎度のこと過ぎてもう出てこなかった…
慣れって怖い。
「…そんなんじゃねーよ」
俺はおっさんの言葉にそう返して後ろを振り返ると、おっさんは冷蔵庫を勝手に漁っている。
…これも毎度のこと過ぎて注意の言葉は出てこなかった。
「まぁ、でも振られてもしゃーないわな〜」
俺の言葉を無視しておっさんがそんなことを言って笑う…
「だから違う」と言い返そうとしたその時、おっさんが思いもよらないことを口にした。
「お前ちょっと太ったしぃ」
「……は?」