…しかし、

屋上まで階段を上がって行くと、彼女の姿はそこにはなかった。

あるのは立ち入り禁止の扉だけ…





「消えた…?」


どういうことだろう…

とうとう暑さで頭がおかしくなったのかもしれないと思った。


しかし、確認のために開くはずのない扉に手をかけてみると、立ち入り禁止の扉はあっさり開いた…



扉の向こうの屋上には、彼女の姿があった。

フェンス越しに下を見下ろしているその後ろ姿に声を掛けた



「……なにやってんの?」


すると彼女は驚いたように振り向いて俺を見た。





「…此所って、立ち入り禁止のはずだよな?」


不審に思いながらそう訊ねると、彼女はポケットの中から小さな銀色の鍵を取り出した。




「ここの合鍵 」


鍵を見せびらかしたままにっこりと微笑まれて、

可愛い…と、不覚にも思ってしまった…





「なんで、そんなもん持ってんの?」


「サンタクロースに貰ったの」


平然とそう答える彼女に対し、俺の方は呆然となった…



「…サンタクロース?」


「 うん。サンタクロース 」


「………。」




ぽかんとなる俺とは対照的に、

彼女はのほほんとただ笑っていた…。