家族ごっこ




俺が片平さんを嫌いなわけがない。


むしろ好きだから、一緒に居れない。

俺と一緒だと、あの人は幸せになれない…。




…それに、

片平さんはきっと俺が母さんの本当の子どもじゃないことを知らないだろう。

俺が母さんの子だと思っているから、あの人は俺に優しいんだと思う。


だから一緒には居られない……。




でも本当は、片平さんの為とかじゃなくて、

自分の為なんだろうと思う……。




あの人に嫌われたくない、疎まれたくない…

自分が傷つきたくないから、こうして距離を保っているんだと思う。





…気が付けば俺はおっさんにそんなことを話していた。

おっさんは珍しく真面目な顔をして、俺の話を聞いてくれた…。



「…そういえば、おっさんも家族居るんだろ?

ホームレスなんかしてていいの?」



確か、有坂 豊春には嫁と子どもが居たはずだ…

それなのに家族を放り出してこんな生活なんて、よっぽどの理由があるのだろうか……




「ホームレスやない。公園の主や…。

…わしな、絵描かれへんようになってもうたんや」


おっさんはそう口にした。



「描けないって…」


「そのまんまの意味や。

なーんも描かれへんようになってな、気分転換に散歩しに外に出たらうっかり3年も過ぎとったわ…」


「…………」



おっさんの話に、俺はなんと返せばいいのかわからなかった。

ただ黙ったままになっていると、おっさんがにっと笑って俺を見た。





「そういうわけや。今晩も泊めてくれへん?」



「帰れ」