なぜそんなことになったかと言うと、話は2年ほど前まで遡る……


2年ほど前、

俺が高校に入学し、一人暮らしを始めてすぐの頃…


今と同じように片平さんから食事に呼ばれ、一緒に食事をした。
その帰りに、片平さんから高校生へのお小遣いとは思えないほどの大金を渡された。


生活の面倒は充分に見てもらっているし、バイトも始めたばかりだったから不自由なことなんてなかった俺はいらないと断った。

が、片平さんはそれを聞かず、半ば強引に俺に押し付けたのだ…。



彼なりの優しさだとして、俺はそれをありがたく受け取っておくことにしたのだが、


どうでもいいことには使えない。

かと言って、貯金してしまえば、自分の性格を考えると一生使うことがないような気がする…。


考えた俺は、使い道が思いつくまで一時的に冷凍庫のなかに置いておくことにした。


なぜ冷凍庫なのかというと、簡単に取り出せるし、誰にも見つからないと思ったからだ。


…当時の俺は呆れるほどアホだった。



結局、使い道は決まらず、冷凍庫のなかに置きっぱなしなったお金。

そして、会う度に片平さんは同じ額を俺に渡し続けている…。


それが手つかずのまま冷凍庫のなかに置かれ続け、
数えきれないほどの諭吉が冷凍庫のなかで眠ることとなってしまったのだった……。





「…あほか」


俺の話を聞いたおっさんは、心底呆れたようにそう口にした。



「……俺もアホだけどさ、


勝手にそれを遣うおっさんも人としてどうなんだよ…

ていうか、人の家の冷蔵庫を漁るなよ」


そう言い返すと、おっさんはあからさまに笑って誤魔化した。