…その後、
おっさんは何度か俺に絵の指導をしようとやって来たが、俺はその度におっさんを撥ね付け続けた。
そんなある日のことだ。
おっさんは意気揚々と俺の部屋に訪れた。
AVを持参して…
「AV鑑賞するで!」
「あんたホームレスのくせにそんなもん買ってんじゃねぇよ!!」
「ちゃうちゃう。拾ったんや」
そう言っておっさんは我が物顔でプレイヤーを弄り、DVDを再生した。
「ひとの家で、そんなもの観んなよ…」
「固いこというなや。
おまえも男やったら男の楽しみくらいわかるやろ?」
「男とか言う以前に、あんたは大人だろうが…
子供への配慮をしろよ」
「まぁまぁ。
お前もこれから先、絵を続けるんならヌード描くことも何度かあるやろ…
今のうちに、他人の裸への免疫つけて観察できるようになっとかなあかんで」
画面から視線を外すことなく、おっさんはそんなもっともらしいことを言った。
指導は受けないつもりだったのに、このおっさんのペースに巻き込まれると、それも上手くいかなくなる。
結局俺はその日、おっさんから人物のデッサンについての指導を受けてしまっていた……。