9月の真ん中。
学校では体育祭が行われていた。
"学校の行事では一緒にいる"
という恋人ごっこのルールに則り、俺は神菜と一緒に居ることにした…
…が、彼女の姿が見えない。
自分の参加競技を終えて、クラスの応援席に戻ると、神菜の姿はそこにはなかったのだ。
「…なぁ、北野。神菜どこ行ったか知ってるか?」
友人の北野に訊ねてみると、奴はニヤニヤ顔で俺を見た。
「優斗はほんと神菜ちゃん好きだな〜」
「うるさい」
茶化す言葉に、俺は不機嫌に言い返した。そんな俺に北野はお構いなしに笑っている。
「それにしても、まさか優斗と神菜ちゃんが付き合うなんてなー」
「なんだよそれ…
俺が神菜と付き合っちゃ悪いのか?」
「いやいや、そういう意味じゃなくてさ、神菜ちゃんって恋愛とか興味無さそうだったから。
それに優斗は……
あっ…、悪ぃ。やっぱなんでもない」
北野は言いかけた言葉を途切らせ、俺に謝った。
こいつがなにを言おうとしていたのかは予想出来る。
俺の母さんのことだろう…。
母さんは俺が中学の頃に亡くなっている。
その時のことが原因で、俺は女の子と付き合うことをしなくなった…。
そのことを知っている北野は、
俺が急に神菜と付き合い出したことを不思議に思ったんだろう……。
それを言おうとして、死んだ母さんの話題になりそうになってしまい、北野は俺に謝ったのだ。