俺と彼女の恋人ごっこは、周囲にバレることはなかった。
"恋人ごっこ"ということもあって喧嘩をすることもなく、仲のいいカップルとして、クラスにもすっかり馴染んだどころだった…。
そして、当初の目的であった"友達との距離を置く"というのも、あっさり達成出来たようで、
神菜は以前よりもちゃんと笑う回数が増えたような気がする…。
そんなある日のことだ…
「南君。ちょっとお話したいんだけど、いいかな?」
神菜の友人の、
早乙女 美優と藤崎 由夏の2人にそう言って校舎裏に連れ出された…。
「…話って?神菜のこと?」
「そう。神菜のこと」
「アタシたち、南君に言いたいことがあるの」
…なんとなく、怖い雰囲気。
早乙女さんの方は口調は甘ったるいのに、目が笑っていないせいで、恐ろしく思えた。
まさか、俺と彼女が恋人になったせいで、自分たちへの付き合いが悪くなったとでも言い出すのではないか…。
そんなことを予想して俺は気が重くなった。
「…なに?」
恐る恐るそう訊ねると、2人は顔を見合わせ、意を決したように俺に向かって口を開いた…
「神菜のこと好き?」
「…え?」
思ってもみなかった質問に、俺はポカンとなった。
ポカンとして即答できなかった俺に、藤崎さんが怒ったようにもう一度訊ねた
「神菜のこと好き!?」
「…も、もちろん」