不思議な女の子と出会った…。
高校最後の夏休みのことだ。
ただ、夏休みと言っても、受験生にそんなものは無いに等しい…。
ただひたすらに受験勉強に明け暮れる毎日。
俺‥南 優斗(ミナミ ユウト)も、その夏休みが無い受験生の1人。
美大への進学を希望している俺は、普通の受験勉強に加えてデッサンの練習が日課になっていた…。
夏休みの補習授業の後は、そのまま美術室でデッサン。
…まだ7月であるにも関わらず、今日は猛暑と言っても過言ではない気温。
俺はどうしても絵を描く気分になれず、サボっていた…。
美術室から近いところにある立ち入り禁止になっている屋上へと上がる階段の踊り場。
そこは誰も上がって来ないので俺にとっての絶好のサボり場所だ。
少しでも暑さを忘れようと、コンクリートの壁にもたれてだれていれば、
俺の前を通り過ぎる女子が一人。
…その子は、
まるで暑さを感じていないような軽い足取りで、俺の前を通り過ぎて階段を駆け上がって行った…。