恋人ごっこの終わりは本当にあっけなくて、
皆に伝える別れた理由は"ふたりの愛が冷めたから"
なんて適当な理由にも程がある。
もっと気の聞いた理由を考えられなかったのは、神菜の前では辛さを隠すだけでいっぱいいっぱいだったから。
「ごめん」と神菜が謝る。
終わってしまったことに対してか、ごっこに付き合わされたことに対してかはよくわからない。
「大丈夫だって」
そう平気に笑ってみせたのも、強がりで。
「神菜こそがんばれよ」
なんて、好きな奴ができた神菜に最後にそう励ましたのも、かっこつけだ。
「かっこわる……」
屋上を出て、あの踊り場まで来たとこで思わず自分自身に呟いた。
格好悪くてしょうがない。
神菜の居る屋上へ引き返せない自分が。
もう終わってしまったのに、
未練がましく振り返って階段の上を見る。
神菜は、
また泣いているのかな。
変な所もあるけど、優しい子だから。
罪悪感みたいなものにかられて、落ち込んでるかもしれない。
"俺のせいで泣かないで”と、
"俺を思って泣いてくれればいいのに”
そう二つ、同時に思った。