乱樹(らんじゅ)の香り

兵庫はカイラの肩を掴んで、麗を捕まえている腕を、離させた。

麗は、開放されて、そこから崩れ落ちた。

ほとんど倒れたと言ってもいい。

目の前がくらくらして、息が苦しい。

「ごめ…」

カイラが謝ろうとするのが聞こえた。

それに割り込むように、

「麗を殺す気か」

怒りのこもった、兵庫の声がした。

ぜえぜえと呼吸を繰り返すと、麗にはやっと周りが見えてきた。

兵庫がそばにしゃがみ込んでいて顔をあげた麗を、覗き込んでいた。

「大丈夫?」