乱樹(らんじゅ)の香り

兵庫が追いかける。

「あれ、オレがタカトシのイトコだって責任感だと思う?

それともそんなの関係なくて、怒ってるんだと思う?」

カイラが楽しそうに麗に言う。

『そんなこと、知るか』

言いたかったけれど、カイラは結構足が速くて、ついて行かされるのが苦しくて、

麗は泣きそうになった。

あんまり、ヒトのこと、考えないんだな、カイラは。

けれど、困ったように追いかけてきていた兵庫の顔が、突然真顔になるのが、チラリと見えた。

真剣に、構えて、すると、あっという間に兵庫は、カイラを捕まえた。

「やめろ」

静かに、厳しい声が降ってくる。