乱樹(らんじゅ)の香り

タカちゃんの声って、こんなにも脳味噌に響く声だったのか。

麗は、思って、兵庫を見た。

子供みたいに、綺麗な漆黒の瞳だった。

兵庫はもっとかすれた声で喋り出す。

「入学した時から、麗のこと気になってたんだ」

「うそっ」

「あんまりかわいくて、好みな感じすぎて、話せなかったけど。

こんなそばに来てくれることなんかあるとも思わなかった。

しかも自分から」

「ええっ。今は自分からじゃないけど」

「そうだけど。

麗、結構、ガードしてるオレの中に遠慮なく入り込んでくるから」

「…そうだっけ」