乱樹(らんじゅ)の香り


「まだ、言ってる」

麗はすこし怒った。

兵庫が、麗の方に、身体を寄せた。

手を、麗に伸ばしかけて、止まる。

「え・・・と」

「タカちゃん?」

「うん。カイラが、今にもバンって来そうな気がして」

「でも、オートロックで入れないでしょ?」

「それが、意外に入れたりする。

誰かが入った瞬間に、よく、入り込んでくるから、あいつ」

兵庫は、立ち上がって、ドアをロックした。

「時間制限付きなら、麗の身も安全かも」

兵庫が笑う。

それから、麗のすぐ前にしゃがんで、麗の両横に手をついた。

安易な逃げ経路を断たれて、麗はドキドキした。

「オレ…」

いつもより息の混じった声。