乱樹(らんじゅ)の香り

麗は、そうなるところを想像してしまって、クスクス笑いながら、兵庫の手をみた。

やっぱり、綺麗で滑らかな指。

その指を曲げて、頬杖をついている。

言っておきながら、自分でも本気にしてなかったんだろう。

麗がその手に触ると、兵庫は物凄く驚いた。

ふと、麗の頭にカイラの言葉がよみがえった。

『かなり強引に出ないと、あいつ一生麗ちゃんのモノにならないと思うよ。

何せ、優柔不断だから』

「タカちゃん、ピアスのお礼。

今だったら、何してもいいよ」

兵庫はニッコリ笑って麗の唇に触れてきた。

とても軽く。

「残念だけど、カイラが邪魔なんだよな・・・麗?」

麗は自分が兵庫を見る目が、潤ん でいるのがわかった。

「本当にオレでいいのかな」

兵庫がつぶやいて苦笑した。