乱樹(らんじゅ)の香り


「じゃ、ここで待ってる」

「・・・そお?」

言って、兵庫は自分も隣に座った。

「タカちゃん」

「えっ?」

「あたし、タカちゃんのこと」

ちゃんと言おうと思うのに、兵庫の顔を見ると、どうしても言葉が出てこない。

「あ・・・やっぱり言えないや。

どうしてこう、言いにくいんだろう」

苦笑いをする。

「じゃ、代わりに、胸倉をつかんでみせる、とか」

「喧嘩売ってるみたいだね」

「じゃ、手に触わる、とか」

「それなら、よーし、売られた喧嘩は買ってやる!!

ってことにはならないね」