麗は苦笑した。

「彼女、いなかったら良かったのに」

兵庫はちょっと黙った。

それから、

「もう、歩けそう?」

突然訊いた。

「外、行かない?」

麗は、ソファから足を下ろした。

「残念。全然歩けそう」

兵庫は笑って、それでも立ち上がるために手を貸してくれる。

細くて、長くて、綺麗な指だ。

男にしておくのはもったいないきれいな手。

血が通ってないみたいに整っているのに、触ると、暖かい。

くそ~。いいな。

彼女はこんなこと、とっくに知ってるんだな。

何か、悔しい。