乱樹(らんじゅ)の香り

「こっちこそ、無駄に歩かせてごめんね。じゃ、帰る。

ゆっくり寝ててね」

帰ろうとすると、

「待って」

言っておきながら、兵庫は、頭を抱える。

「ああ、オレ、何いうつもりだ」

独りで言って、麗を見る。

「こんなこと言ったらズルいのはわかってるけど。

麗に好かれてるのが本当だったら、オレは凄く嬉しい」

「だから、本当だったら」

早く、横になってほしいな。

しんどそうだ。

深く考えないで、麗は、兵庫に触れた。

頬が異様に熱かった。