乱樹(らんじゅ)の香り

兵庫の前を通るだけでも、熱気が伝わってくる。

麗は、ドアを通り抜けると、振り返って、兵庫の腕をつかんだ。

兵庫は、ドアから離れて、中に入ってくる。

そのまま、玄関に押しつけるように座らせた。

「本当は、一番つらい熱の出はじめに、お見舞いなんか来ちゃいけないんだよね」

「そうかも。歩くのも辛い」

兵庫は、苦笑いした。

「ごめんね。戻るの手伝うよ」

兵庫は、ちょっと驚いて、麗を見た。

けれど、靴を脱いで、兵庫に手を貸そうとしている麗に、素直に従った。