―ガチャ…

「…寒っ…!」


部屋に戻ると、その冷たさに相変わらず身を縮めた。


折角車内で温まったのに、部屋に戻るまでの間に体が冷える。


電気をつけるより早く、手探りでエアコンのリモコンを探し出し、スイッチを入れた。



『―――クシュッ!』


「…大丈夫?
お前、風邪引くからシャワーでも浴びれば?」


小さくくしゃみをした千里に、風呂場を指差して言葉を掛けた。



『…うん、そーする…。
でもあたし、もぉ風邪なんて引かないけど。』


「―――ッ!」


言葉を残し、風呂場へと消えようとする千里に、瞬間、心臓が嫌な音を打つ。


そして気付いたら、その腕を握り締めていた。



『…どしたの?
シャワーだから、一緒には入れないよ?』


俺に向き直り、千里は不思議そうに聞いてきた。



「…お前、何言ってんの…?」


『―――った!』


瞬間、千里を壁に押し当てた。


ドンッと音を立て、千里の顔が歪む。


だけど俺は、その顔を睨み付けて言葉を続けた。


「…期待させるようなこと言うなよ。
別に俺、無理やりヤろうなんて思ってねぇから。
そこまでは…求めてねぇよ…。」


『…無理やりじゃないよ?』


「―――ッ!」


目を見開き、言葉を失った。


緩んだ俺の手から腕を外し、千里は笑い掛ける。



『…言ったじゃん。
マツは、あたしのこの世で最期の男なの。
あたしの全部、あげるよ?』


「―――ッ!」



俺は、何を言わせているんだろう…。


これから俺達は、どうなってしまうんだろう…。