―――残された5日の間に、俺は全てにカタをつける。


全て捨てて、最高の笑顔で千里を迎えに行く。


誰にも理解されなくても良い。


全部取っ払って、俺の中を千里だけにするんだ。


これからは、千里のことだけを考えて生きられる。


夢を馳せ、これから起こる恐怖と不安を打ち消した。





『…ママ、寝たみたいだね…。』


千里の寝息を確認したルミは、安心したように深いため息をついた。



「…今のうちに入院に必要なもん取りに行こう。
お前も来いよ。」


『…うん。』


立ち上がった俺と同じようにルミも立ち上がり、静かに病室を出た。


病院の空気はまるで陰そのもので、吸っているだけで不安になる。



病院から出ると、先ほどと変わらず粉雪が舞っていた。


見上げる空は真っ暗で、隼人さんが作り出した闇に吸い込まれそうになる。


きっとあの人は、

千里の作り出した灯りだけを頼りに、巣食われそうな道を歩いてきたのだろう。


俺の咥えていた煙草から吐き出された煙は、吐き出す息と一緒に真っ白く消えた。


かじかむ手よりも締め付けられた胸が痛くて、足早に車に向かった。




「…なぁ、ルミ…。
千里のこと、嫌いにならねぇでくれよ…。」


『…なるわけないよ…。
ママはルミに色んなことを教えてくれて、色んな相談に乗ってくれたの。』


そして顔をこちらに向け、少しだけ微笑んで続けた。


『今、ルミ彼氏居るんだ。
ママが相談に乗ってくれたから、ルミは今、その人のこと信じられるようになったの。』


「…そっか。」



ルミの過去は、聞かなかった。


だけど、軽からず何かを背負っているんだと思う。


千里が救ったのは、隼人さんと俺だけじゃなかったんだな…。


俺が取り上げてごめんな、ルミ―――…