『…ママ…?』


声に反応したように、千里はゆっくりと目を覚ました。


ルミの顔を見た瞬間、千里の顔は悲しそうに歪んでいく。



『…何で…生きてるの…?』


顔を覆う左手の手首には、包帯が巻かれていた。


右腕には、点滴が繋がれている。



『…ママ…。
そんなこと言わないでよ…。』


千里の嗚咽とルミの嗚咽に包まれた病室は、息苦しくて仕方がなかった。


生きていることを喜んでいない千里に、何も言えなくて。


顔を覆って唇を噛み締めた。



『…千里…。
マツが助けてくれたんだ…。』


『―――ッ!』


嵐の言葉に、だけど千里は何も言わなかった。


“何で”って言葉ばかりが聞こえてきて、それが苦しくて仕方がなかった。



助けなければ良かったんだろうか…。


あの時…


隼人さんが死んだ時、止めなければ良かったんだろうか…。



『…もぉ耐えられない…。
隼人の傍に…行きたい…。』


「―――ッ!」



“ふざけんな”って、言ってやりたかった…。


“俺の傍に居ろ”って…


言ってやりたかったのに…。



これ以上苦しめることなんて、俺には出来なかった…。


何を言っても傷つける気がして…。


そんな自分が、すごく嫌だった…。