『…じゃあ誰が、千里の悩み聞くんだよ?』


低く聞いてくる嵐の顔が見れなかった。


締め付ける胸が痛くて、拳を握り締める。



「…また…繰り返すだけだ…。」


『―――ッ!』



どこに戻れば、こんなことにならずに済んだだろう…。


いつに戻れば、千里は傷つかずに済んだだろう…。



『…社長はそれをわかってて、昨日ママを呼んだんじゃないんですか?』


「―――ッ!」


立ち上がった真鍋は、俺を睨み付ける。



『“半端なことしか出来ないなら、会いにいくな”って前に言いましたよねぇ?
もぉ、社長が何とかするしかないんですよ…!』


「―――ッ!」


『幸せにしてやれよ!
アンタの手で!!』



まるで、あの日がフラッシュバックしたのかと思った。


真鍋が言った台詞は、そのまま俺が隼人さんに言った台詞で。



そんな自信なんて、まるでなかった。


目を覚ました千里が、何を言うのかだけが怖かった。


隼人さんがあの時、何を恐れていたのか。


それがわかってしまう自分自身を、受け入れることが出来なかった。



俺は隼人さんとは違う…。


否定しても否定しても、千里が言ったように、

俺は隼人さんに近づいていってるのかもしれない。




きっともぉ、俺の頭の片隅には、あの方法が住み着いていたんだと思う。


千里の笑った顔を見たくて…


幸せになれる方法を探していた。


傷つくのは、俺だけで良い。



隼人さんとは違う方法で―――…