処置室から運び出される千里は、まるで人形みたいに血の通っていない色をしていた。


細い腕には点滴が刺され、左の手首に巻かれた真っ白な包帯が、ただ痛々しかった。



運ばれたのは、ナースステーションの向かいにあるガラス張りの部屋。


意識を取り戻し、安定したら一般病室に移されるらしい。



千里のベッドを取り囲むように、嵐とルミと真鍋が顔を覗き込む。


だけど俺は、その後ろで動けないまま。



目を覚ました時、俺が居て良いのだろうか。


…また傷つけるようなことになってしまったら…。


そんなことを考えるだけで、ただ怖かった。



何でこんなことになってしまったんだろう…。


何で千里は、こんなことをしたんだろう…。



傍に行くことも、手を伸ばすことも出来ない…。



失って、取り戻して、また失って、取り戻して…


折角離れたのに…。


お前の笑った顔が見たいから、追いかけなかったのに…。


傷つけたくなかったから、“もぉ会わない”って決めたのに…。



こんなことをさせたいんじゃない。


隼人さんのところに行かせる為じゃない…。



何をすることが、一番千里のためになるだろう…。


苦しいのは、俺だけで十分だ…。


ただ、愛してるから…。



「…俺、帰るわ…。」


『―――ッ!』


俯く俺に、嵐が拳を握り締めて近づく。



『…“男なら、責任取れ”って言わなかったっけ?』


「傍に居ることが、責任の取り方だとは思えねぇ。」


『―――ッ!』