時が解決してくれるのを待つしかなかったんだ。


そんなことにしか、祈りを込めることが出来なかった。


1年経てばお前の傷は少しだけ小さくなって、

そんでもってまた1年経つ頃には、もうちょっとだけ小さくなって…。


何年も経ったら、風が吹けば飛んじゃうくらいに、

隼人さんの記憶なんかなくなって行くんだろうなって。


出来ることなら、俺が吹き飛ばしてやりたいんだけど、

そこまで我が儘は言わねぇから。


せめて、千里だけでも楽にしてやって欲しかった。





『…ねぇ、マツの“夢”って何…?』



たまに千里は、不思議なことを聞いて来るんだ。


だけど俺は、“何で?”なんて聞かずに、ちゃんと答えてやるんだよ。



「…俺の夢かぁ…。」



早くお前が、隼人さんのことを忘れてくれることだよ。


もーちょっと言っちゃえば、隼人さんの記憶だけ失くして、

そこに俺がスッポリ嵌る事かな。



「…今の会社、でっかくすることかな…。」



だけど、そんなことはお前に言えないだろ?



「何十人も従業員引き連れて、超儲けまくって!
いつかは浴槽で万札に浸かるんだよ!(笑)」



俺が金を稼ぐ理由は、本当はそんなことじゃないんだ。


お前に美味しい物食べさせる為だし、毎日お前の店に通う為なんだ。



「そんで、ハーレム作っちゃってな?
沢尻エリカみたいな女をハベらすんだよ!(笑)」



酒も入ってないのに、饒舌だった。


やっぱり嘘は苦手だから、身振り手振りなんか交えちゃって。



『あははっ!マツって、沢尻エリカ好きなんだ~!』



まぁ、こんなカンジで笑われたりなんかして。


別に沢尻エリカが好きなんじゃなくて、

お前に目元がちょっと似てるから好きなだけなんだよ。


お前が手に入りゃ、他の女なんかいらねぇだろ?