『しっかしアイツ、面白いよな?(笑)』


煙草を消した嵐は、割り箸を持ち上げて思い出したように笑う。



『うちのヤツラ見て、アイツ何て言ったと思う?』


「…何て言ったんだよ?」


回りくどい嵐に、煙草を消して再び眉をしかめた。



『“全員カボチャにしか見えないね。
誰が誰かわかんない”だってさ!!(笑)』


そう言って、デカい口を開けて笑った。


“仮にもホストクラブだぞ?”と言いながら、まだ笑いが収まらない。


そんな嵐と、そんなことを言う千里の顔を想像し、ため息が出た。



『…で、俺はトマトなんだと!!(笑)』


「…良かったな。
アイツ、トマト好きなんだよ。」


呆れ半分で大爆笑の嵐を見つめながら、置かれていた水を口に含んだ。



『…そうなの?
じゃあ、まぁ良いけど。』



“軽いのが良い”と言いながら生姜焼き定食を頼み、

トマトに例えられても何とも思ってない嵐は、

俺の中では千里と同じくらいに、頭を痛める原因だと思う。



『…“マツと隼人の違いは、トッポとポッキーの違いだ”って言ってた。
まぁ何にせよ、俺らとは違うんだろうな。』


そして嵐は、やっと並べられた料理に手をつけ始めた。



…トッポとポッキー…?


お菓子じゃねぇかよ!


…もぉ、意味が分からない。



『“別に、ミルクティーとレモンティーでも良いし、イラクとイランでも良いよ”だって。
羨ましいねぇ、お前ら。』


「…どこがだよ。」


考えることが馬鹿らしくなり、大きなため息をついた。



多分俺には、アイツの考えてることなんて、一生わかんないんだろう。


そんなことさえ頭をよぎり、振り払うように新しい煙草に火をつけた。