粉雪2-sleeping beauty-

『…だから、気にしないで…?』


「―――ッ!」



…何でいつも、俺のことばかり優先させるんだろう…。


お前だって少なからず、傷ついてるはずなのに…。



「…でも俺は…聞いてやらなかった…。」



絞り出した声は、多分震えてて。


お前の前では、何でか俺は、弱くなるんだ…。



『…うん、そうだね…。
ちょっとだけ、マツのこと嫌いになった…。』


言いながら、安心させるように笑いかけ、言葉を続ける。


『…“会いたい”なんて、思ってなかった…。
あの街にだって、戻りたいなんて思わなかった…。
…だから、マツに同意して欲しかったんだ…。』


思い出すように遠くを見つめながら紡ぐ言葉を、

今度は聞き漏らさないようにとだけ、考え続けた。



『…ガンだったんだって…。
あの人らしい結末だよ…。』


そう言って、視線を俺に戻した。


『…マツがね?
“一人で逝かせないでくれて、ありがとう”って行ってたから…。
死んだ後だけど、見送りに行ったの…。』


「―――ッ!」


『…勤めてた会社の上司って人が一人、代表で来ただけだった…。
お焼香だけで帰ったけどね…。
あの人が自分で選んだ人生だけど、寂しい終わり方だよ…。』


“さすがは親子?”と言って笑いながら、短くなった煙草を消した。



「…お前は…違う…!」


『…そうだと良いね…。』



息苦しかった。


ただ、もぉ何も失わせたくなかった…。


何でお前ばっか、傷つくんだよ…。



“俺じゃ頼りにならねぇか…?”


そう聞いた時、お前は何も答えなかったよな…。


何も聞いてやれなかった俺が、そんなこと言うべきじゃなかったんだ…。