「…俺ちょっと、マジで寝ようかな…。」


まだ開店前の店のソファーで、あくびばかりが出る。



『やめてよ~!
営業妨害じゃん!!』


忙しそうに動き回る千里は、俺を睨み付けた。


流行のバラードを流されると、さらに眠気が襲ってくる。



『マツさん、ボディーガード?(笑)』


笑いを堪えたルミは、俺に耳打ちしてきた。


その問い掛けにため息で返し、煙草を咥えて火をつける。





―カランッ!…

『―――ッ!』


開店前で開く筈のないドアが開き、一斉に振り返った。



『いらっしゃい、谷口さん♪』


相変わらず薄汚い谷口に、千里は笑顔を向ける。



『まだ、準備中なんですよ。
ちょっと待って貰えたら―――』


『ママ!』


千里の言葉を遮り、谷口は聞いたこともないような大声を上げた。


瞬間、千里の顔が強張る。



『…何で僕に…助けを求めないんだい…?』


『―――ッ!』


谷口は、悲壮感を漂わせた顔で、一歩ずつ千里に近づく。


引き攣った顔の千里の足は、自然と後ずさりをしていた。




…ヤバイ…!


瞬時にそう思った―――…