食事をしている間、会話らしい会話はなかった。

さっきの尋問みたいな会話が嘘みたいだ。


──図書館で見た時は、ふわふわしたかわいい系の女。


でも今は、何を考えてるのさっぱり読み取れない。




「でも、好きな子はいるでしょ?」

食後にコーヒーを飲みながら、急に彼女はそう言った。


「……そういう桜井さんこそ、彼氏、いるんでしょ?」

俺は質問に質問で返した。



自分のことばかり聞かれるのは好きじゃない。




「名前、なんで……」

彼女は俺が“桜井さん”と呼んだことに驚いたようだった。


「図書館で、エプロン」

俺がそう言って自分の胸を指さすと、彼女は納得したように小さく「あぁ」と言った。




「……いないわよ。好きな人もいない」

少し間があったけど、俺はそれを額面通りに受け取ることにした。

どっちにしたって、俺には関係ないし。





「ねぇ、うち来ない?」