「いいよ」


だけど、なかなか話し出さない千鶴は、抱えている膝に自分の顔を埋めた。



「……好き、なのかも……」

俺に向かって、というよりも、膝に向かって紡がれた言葉。


……気づいてなかったのか、やっぱり。


これだけショックを受けて、ようやく自分の気持ちに気づいたんだな。


「彼女、できないわけないのにね。トモも……修ちゃんも」

「……なんでそこで俺?」


いきなり名前を出されて、思わず笑ってしまった。



彼女、ねぇ。

今はいないけど。

それなりに遊んでた時期もあったっつーか、何ていうか……。



ずっと千鶴が好きだったけど、同時に手に入らないことも分かってたから。



バタン



ドアの音が小さく聞こえた。



──来たか。


顔を下げたままの千鶴は気づいていない様子。

肩が小さく震えているような気がして、小さな子供にするように頭を撫でた。