しばらく黙っていた審査員長が口を開く。
「あなた…何なの?」
「……。」
えっ……。
まさかまたダメ出し!?
俺的には凄い良かったんだけど…
「………どこかの事務所に所属は?、」
「えっ?!無いですけど…」
「こういう風に、皆の前で歌うのは初めて?」
「ええと…。カラオケとかなら…、こういうオーディションは初めてです。」
「……上出来よ。あなたあたしの所来なさい!」
「え……。」
美咲も怒られるかと思ってたっぽくて、この反応に戸惑っている。
「どうする?…本気で歌手になりたいなら来てちょうだい。」
「…歌手には、ホントになりたいです。でも………。」
そこで美咲は、チラッと俺を見た。
目が合って、思わずドキッとする。
「…あたし、つい最近大切な人が居なくなったんです。」
「………えぇ。」
「その人に近付きたいけど…。あたし、怖いのかな?自信が無いんです…。それならオーディション受けるなって話なんですけどね?。」
そこで曖昧に笑って、俺の方を真っ直ぐに見つめてきた。
「あたし、そこに行ってもいいかな?」
「………。」
「もう逃げ回りたくないんだ…。これで良いのかは分かんない、けど…。」
そこでニカッと笑って、
「あたし、歌手になりたい!」
その言葉に、心が動いた気がした。
美咲は俺と同じなんだ
自分に自信が無くて、道を見失うことばっか。


