「それでは、審査を行います。一人ずつこの曲を歌っていって下さい、では51番の人。」


「はい!!」

審査員長である、世界的有名なミュージシャンの一言で始まった。



50人も聞いてきたから、何かもう上手いのかどうか分かんないや…。



歌の内容は、大切な人が居なくなり、悲しみにくれる少女の話…


でも最後は、一人でも真っ直ぐに歩いていくんだ。




凄いな………。

俺は行き詰まってばかりだ。




「ちょっとあなた、」

「はい!!」

「馬鹿にしてるの?声が全然出せてないじゃない!」

「はい…。」


「リズム感もめちゃくちゃだし…。あなたは無理ね」



終わった後は、審査員長がダメ出ししまくる…。


今まで褒められた人なんて居なかったような…



「次、52番の人。」

「……………はい。」



美咲の番だ…。


俺に会ったせいか、瞳がどこか切ない。




バラードっぽい、ゆったりした曲が流れ出す。




それと同時に、美咲の目が閉じられる…。





そしてゆっくりと、目を開きながら息を吸い込んだ。





始まるっ……。



美咲の世界が…。