「シュリー様の記憶…全部また消すのですか?」

ファイが額に眉をよせながら言うと、

今度はジャックが眉をよせた。

「また?」

ジャックがそう言うとファイがジャックにチラリと目をむけた。

そして、

「シュリー様はグレン様が見つけて、
家に連れて帰ったのです。
その時、
シュリー様には自分の名前以外…
ほとんど覚えておられませんでした。」

ファイはグレンに目線を戻した。

グレンはシュリーを見つめていた。

「シュリーの怯えている男の記憶だけを消す。」

そう言って、

グレンはシュリーの頭に手をあてた。

ファイは少し安心したような表情をし、

また無表情になった。

ジャックはなにも言わなかった。

グレンの手がほんのり光ったと思うと、

グレンは手を離した。

「もう大丈夫だ。」

疲れたから寝ると言ってグレンは近くのソファでねた。

「最近、血を飲んでいないみたいだね。」

ソファに寝ているグレンに向かって、

ジャックがいった。

グレンは肩を少し動いたと思うと

「どうってことない。」

といった。

ファイは、

「グレン様はお疲れになられていますので、
今日のところはお引き取りください。」

そう言って、

ジャックを部屋からだした。