少女のヴァンパイア


「体には別状ないけど、酷くやつれていたよ。」

ジャックはその時のナイトレ夫妻を思い出したのか、

顔を歪めた。

「そんなに酷いのか?」

グレンも、

ナイトレ夫妻はあの時から、

信頼していたので、

数ヶ月前にナイトレ夫妻が行方不明になり、

酷く焦った。

人間界のそこら中を探し周ったが、

ふたりの証拠さへ、

なにひとつ見当たらなかった。

だがその帰り道にシュリーに出会った。

あの時にはまさかこんなにシュリーを愛しいと思うとは、

思いもよらなかった。

ジャックは真剣な表情をグレンに向ける。

「ナイトレ夫妻はなにも話さないんだよ。」

「なにも話さない?」

グレンがおうむ返しで聞くと、

ジャックは頷く。

「それに…キルギス様が笑わない。」

「では王宮は?」

「勿論、曇りだよ。
作物が育たなくて困る。」

ジャックは苦笑いをこぼし、

また溜め息をついた。