その頃グレンは、
自分が何者かもわからなくなりかけていた。
怖い。
自分の闇に怖いとは思わないが、
自分が操り人形になってしまうことにおそれていた。
「何をそんなに恐れる?
これがお前の望んでいたことだろ?」
闇の中で、
グレンとなったもうひとりのグレンがいう。
"望んでない。
こんなこと望んでない。"
グレンは、
自分を言い聞かせるようにつぶやいた。
それでももうひとりのぐれんの声はグレンに甘く響く。
「いいや。お前はこうなることを望んでる。
だってその証拠に周りをみろ。
お前の闇で周りは真っ暗だ。
あのふざけた大臣たちも怖がってる。
感じるだろ?
大臣たちの感じている恐怖を……
お前はもう、自由だ。」
"自由……?"
グレンがそういうと、
声は嬉しそうにいう。
「そう自由だ。
何をしても何もいわれない。
すべてがお前の自由だ。」
その時グレンは気づかなかった。
グレンはもうひとりのグレンにのっとられ、
自由ではなかったことに……
