カーステレオから流れるは平和を歌う有名なミュージシャン。


「今のうちらには、ビートルズは似合わないと思うんだけど。」

「好みの問題よ。」


事も無げに言い放って、梓さんは銜えた煙草に火を点けた。

この人は冴島梓。
あたしのお母さんの妹で、あたしの叔母さん。
お母さんが過労死した三年前、あたしを引き取ってくれた人。
梓さんと呼ばないと、返事さえしてくれない。


「でもやっぱり、今はビートルズじゃないと思うよ。」


そう言って、後部座席に視線を投げた。