「…何でお母さん、言わなかったのかなあ。」


相変わらず煙草臭さの充満する真っ赤な軽自動車内。
平日昼間からハイスピードで飛ばす梓さんを横目に、出会いを回想して疑問を漏らした。


「まだそんなこと言ってんのか。」


さして気にする様子もなく、梓さんはハイライトをふかす。


「だって気になるよ。お母さん、身寄りはいないって。」


今更、梓さんを疑うつもりなどない。
あたしはこの関係は悪くはないと思っている。