「…ほんとに?」



桜田くんが耳元で、掠れた声で囁く。



「ほんとに?マジで?…嘘じゃない?」



何度も何度も繰り返される言葉に、胸が痛くなる。



「嘘じゃないよ…ごめんね、逃げててごめんっ…」



これはきっと、私が逃げて桜田くんを傷付けていた証だから。

桜田くんの胸を握り締めていた手を、背中に移動させて、力をこめた。



「好きだよ…ずっと、ずっと前から」

「ずっと前?」

「うん。ずっと前。……桜田くんは、まだ、私を…好きでいてくれてるかな…?」



恐る恐る聞くと、桜田くんは私をさらにギュッと強く抱き締めて。



「……当たり前。忘れようと思ったけど、簡単に忘れられるもんじゃなかったよ」



力強く、そう言ってくれた。