「よっ桜田!帰ろうぜー!……って、何してんの?」



どうやらその男の子は桜田くんを迎えに来たらしい。

違うクラスの子だから。

その子は、桜田くんのシャツを掴んで引き止めている私に目線を向けた。



「…誰?」

「あ……わ、私…っ」

「俺ちょっと用意あるから。今日は帰ってて」

「あ、そーなの?」



うろたえる私をよそに、桜田くんは淡々と言って。

それを聞いた男の子は顔をキョトンとさせながらも手を振って帰っていった。


再び沈黙が戻ってきて。



「…で、何なの?話あんでしょ?」



変わらず冷めた声で聞いてくる桜田くんの顔を、勇気を振り絞って見上げて。



「…ついて、来てほしい所が、ある」



震えそうになる声で、伝えた。