「…知ってた?今俺、余裕そうに見えるかもしんねーけどほんとは全然ないんだよ」

「……」

「心臓すげぇバクバクしてるから…喋んのも必死」



そう言って笑う桜田くんが、何を伝えたいのか。



「実は帰りの約束…誘ったときも余裕なかったし」



いつもよりもたくさん喋る桜田くんは、何を伝えたいのか。



「緊張し過ぎて、お前の髪に触った手実はすげー震えてて。 …なあ、知ってた?」



分からないほど

鈍くもないよ。

ただ、勘違いしてないかって不安で、言葉にできないだけで。


泣きそうになって見上げる私を、桜田くんは困ったような顔で優しく微笑んで見下ろして。



「なあ……」






「……キス、してもい?」




ためらって、だけどこくりと頷いた私に。

すこし震えた桜田くんの唇が、



……優しく、触れた。



優しくて甘いキスだった。