「あれ、違うから」

「違う…?」

「いやっ…簡単に触らせてはいるんだろうけど、変な意味はねえの!」

「へ、変な意味……?」



よく分からなくて眉を寄せたとき、手を掴まれたかと思うとそのままぐいっと手を持ち上げられた。

考えていたよりも冷たい手のひらに包まれて、私の体が緊張で固まる。

そのまま私たち2人は立ち止まった。

周りには…誰も、いない。



「……あんなの、何とも思ってないから簡単に触らせられんだよ?」



真剣な瞳が前髪の間から私をじっと見つめる。

目を、そらせない。



「知らないだろ。こうして意識してる奴……好きな子に触れてるときって俺の心臓すげぇバクバクしてんの」

「え……」

「何とも思ってねぇ女だからこそ、触られても何も感じない。気にしない」



だって言うなら、女っつーか友達だし。

そう言って笑った桜田くんは、そっと私の手を自分の頬まで引き寄せて。