鼻が、つんとする。



「っ……う…っ」



泣き出してしまう前にジャグジを精一杯ひねって私はひたすら顔を濡らした。

誰もいなくて良かった。

こんな姿見たら、絶対びっくりされちゃう。



「……は……、」



ようやく気持ちが落ち着いた頃に、顔を濡らすのをやめた。

ジャグジをひねってそのまま鏡にうつる自分を見る。

怖い。

髪の毛も少し濡れちゃってる。

まっすぐになった前髪で、おばけみたい。



「はは…」



乾いた笑いが零れた。

うん、大丈夫。

私…笑える。



「ほんと…しょうもないことで泣きすぎだね」



そう自分に笑いかけて、ハンカチで顔を拭きながらトイレを出た。


桜田くんは、やっぱりいない。


……いない。



「あーー…」



うん。

大丈夫、大丈夫だから。


笑え …自分。