そらせなかったのは、何故だろう。

今までそんなに気になんてならなかったのに。

驚くほど自然な流れで桜田くんの髪の毛に触れた女の子の手が

やけに目についた。



「っ……」



あれ。いたい。

胸が、苦しい。



「…愛菜ちゃん?」



美月ちゃんの呼び掛けに、数秒遅れで振り返る。

心配そうに私を見る美月ちゃんに笑いかけたけれど、うまく笑えている気がしなかった。


やだ

やだ


ココロが叫んでる。

なんだろう、この感情。



「えっちょっ…愛菜ちゃんっ」



桜田くんに、触らないで…!