「じゃあ任せなさい!あたしが協力してあげるから」

「え、いいよ」



楽しそうに手をぐっと握る美月ちゃんの言葉を、私は真顔で否定した。

だって本当に協力なんていらなかったから。

そんな私をショックを受けたような表情で美月ちゃんが見る。

子犬のような瞳だ。



「……いらないの?」

「いらないよ。見てるだけで十分だもん」

「…付き合いたい、とか」

「あはは。ないない」



むしろそれは少し怖いかな…なんて。

例えば、奇跡的な確率で付き合えたとしても、つまんないって思われそうだから。



「ほんとに、見てるだけでいいの…」



そっと、ゆっくり、桜田くんのいる方へ目を向ける。

いつのまにか教室に戻ってきていた桜田くんはいつもみたいにみんなに囲まれていて…まさに私と正反対。

あんなに楽しそうな笑顔が、私に向けられたことなんて1度もない。

だから変に私がアピールしたとしても困っちゃうだろうな。

まあまず私にそんな勇気がないけど。


自嘲気味に笑って、そっと桜田くんから目をそらす。


…いや、そらそうと、した。